3.142016
住宅ローン営業の書き入れ時となる2~3月。日本銀行のマイナス金利政策導入を引き金に、金利の引き下げ競争が過熱している。
10年固定型ローンの指標となる10年国債の金利は、2月にマイナス圏に突入。これを受けて、3メガバンクは3月1日、10年固定型の最優遇金利をそろって年0.8%へと設定した。
3月には10年固定型で破格の年0.5%を提示する銀行も現れた。大手行の一角、三井住友信託銀行だ。同行は店舗数が少ないなど効率経営により営業コストが低い。そのため、他行に比べて、低めの住宅ローン金利の設定が可能。新規顧客獲得の戦略商品と位置づけ、これまでも積極的な金利設定を行ってきたが、2月時点からさらに0.2ポイント引き下げた。
◆借り換えの相談が殺到◆
ちなみに同行の変動型の金利は、3月も年0.6%のままである。変動金利は通常半年ごとに見直されるためで、次の基準日は4月1日となる。
その結果が反映されるのは6月からだ。今後は変動型に金利低下がどの程度反映されるかも焦点となる。
「2月の住宅ローン借り換えの相談は、1月の約4倍にも達した」2月といえば、同行はまだ金利を引き下げる前だった。にもかかわらず、前のめりの反応を見せたのは、借り換え目的の客である。
では借り換えで実際にどこまで金利負担が軽減できるのか。仮に返済中の住宅ローンの金利が年2.0%で、借入残高2000万円、残存期間10年の人が、三井住友信託の10年固定金利0.5%に借り換えたとする。すると、諸経費を考慮しても、概算で121万円のメリットが出る(上図)。
ただし、借り換えは銀行間の客の引き抜き合いにすぎず、新たな消費を生むことにはならない。マイナス金利政策には個人消費を拡大する狙いも含まれる。そのためには住宅ローン金利の引き下げが、新規借り入れ、住宅購入の増加にもつながっていくことが重要である。
◆新規借り入れの動きは限定的◆
しかし、当の住宅業界の反応は、思いのほか冷めているようだ。「これまでもすでに超低金利だったので、ここからあとコンマ数ポイント下がっても、影響は限られるだろう」
そこで、住宅を新規購入する際の金利低下の影響額を、フラット35の例で試算してみた。35年間固定で借り入れる場合の最低金利は、2月の年1.48%から3月の年1.25%へと、0.23ポイント低下した。仮に5000万円を借りるとすれば、総返済額は概算で234万円減る結果となった。
決して少額ではない。が、住宅自体は、多少の金利低下メリットがあったとしても、高額であることに変わりはない。
購買を迷う層の背中を押す効果は限定的だ。
ある不動産仲介業者は、「毎月苦労して返している借金が実際に100万円でも減ると恩恵を感じやすい。それに比べ、これから数千万円の大金を投じて購入する物件が200万円安くなったとしても、心には響きにくい」と、ローン返済と新規借り入れでの感覚の違いを解説する。
むしろ近年のマンション価格の急上昇は、住宅市況を腰折れさせかねない事態を招きつつある。
2015年の首都圏マンションの平均販売価格は5518万円と、1991年(5900万円)以来の高値となった。実質賃金が減少の一途をたどる中、前年に対して458万円も高騰しており、金利低下の恩恵を帳消しにしている。
実際に平均価格を押し上げているのは、富裕層に人気のタワーマンションや都心物件だ。こうした物件の勢いはまだ続いており、大手不動産デベロッパーの住宅部門は至って好調である。
◆中間層は青息吐息◆
しかし購買の動きは二極化しており、中価格帯以下の売れ行きは鈍化。不動産経済研究所の調査によると、2015年の首都圏マンション発売戸数は4万0449戸と、前年よりも1割減少した。
その主因について同社の松田忠司主任研究員は「価格の上昇に一般サラリーマン世帯がついてきていない」と見る。
いきおい一般サラリーマン世帯は、住宅ローンへの依存度を強めている。住宅金融支援機構の調査によると、マンションの住宅ローン年収倍率は、2015年9月末時点で6.9倍に達した。
一般的に「住宅ローンは年収の5倍」が目安とされており、現在はローン破産のリスクが高まる危険水域に突入しつつある。
そのような状況下での金利低下に対して、「相応の返済能力のない人たちが、異例の金利低下局面で返せると勘違いして動いてしまうと、後が怖い」という懸念の声も上がっている。
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