3.22016
ゼネコン業界を恐怖が覆っている。「全棟建て替え」という恐怖が……。
準大手ゼネコン、熊谷組株が売り込まれた。
その日の朝刊で熊谷組が施工した横浜市のマンションで新たな施工不良が見つかり販売元の住友不動産が、全住民に全棟建て替えを提案したと伝わったため一時、前週末比73円(約25%)安の222円と、2013年10月以来の安値に沈んだ。
住友不動産は住民に全棟建て替えを提案した。
マンションに生じた問題自体は一昨年から明らかになっていた。14年6月には、全5棟のうち4棟で支持層と呼ばれる固い地盤に杭(くい)が届いていないことが分かった。なかでも1棟は傾斜していて危険なため住民は退去済み。
住友不と熊谷組はこの1棟を建て替え、残り3棟には補修工事を施す方向で住民と協議を進めていた。建て替え・補修費用や退去した住民の仮住まい費用として、熊谷組は15年4~12月期までに100億円弱を偶発損失引当金に計上し、損失処理を進めてきた。「てっきりこのまま住民と話がまとまると思っていた」矢先に浮上した「全棟建て替え」だった。
流れを変えたのが、15年10月にデータ改ざんが発覚した三井不動産レジデンシャルの傾斜マンション問題だ。同社は表面化した直後に全4棟の建て替え案を住民に提示。手厚い補償案も示した。今年2月には住民側も全棟建て替えを求める方向で意見がまとまった。 この経過を見た住友不のマンションの住人の一部が全棟建て替えを求めて声を上げ始めたようだ。昨年末にまとまるとみられた協議は難航。さらに傾いていない4棟でも、施工時に鉄筋を切断するという新たなミスの疑いが浮上してきた。発覚から2年近くがたち「これ以上協議を長引かせて住民に負担を強いるわけにはいかない」(熊谷組)と、全棟建て替えに傾いた。
熊谷組の業績に与える短期的な影響は大きくないもようだ。全棟建て替えの方針決定を受けて16年3月期の凍結決算で新たに50億円前後を引き当てるとみられるが、もともと工事採算が改善しており、今期業績は上振れ気味。そのバッファーで吸収できそうだからだ。今期の連結純利益予想は前期比2.4倍の129億円だが、第3四半期までに既に120億円を稼いでいた。この問題がなければ数十億円規模での上振れもあり得た。
だが、問題はそれで終わらない。
「想定外の最悪シナリオだ」。ある国内証券アナリストは全棟建て替えの方針決定を伝える報道を見て頭を抱えた。機関投資家からは熊谷組に関する問い合わせが殺到した。「施工ミスが見つかれば、即建て替えという流れができるとしたら、どこまで影響が広がるのか予測がつかない」――そんな不透明感が業界だけでなく、投資家の間でもジワリ広がっている。
あるマンション施工大手の幹部は「本当に全棟を建て直す必要があるのか。法廷で議論し、判例を残してもらった方がよかった」と漏らす。準大手ゼネコンの幹部も「瑕疵(かし)の大小にかかわらず建て替えとなるなら、マンションは怖くて受注できない」と打ち明ける。受注高に占める住宅・オフィスの割合は、大手・準大手ゼネコンでは1~2割程度にとどまる。もともとマンション工事は利益率が低く、販売主や住民との折衝で手間がかかると敬遠するゼネコンも多い。足元は活況で受注する工事を選べる状況にあるだけに、今回の件をきっかけにゼネコンがますますマンション工事の受注を手控えれば、最終的には消費者への影響も懸念される。
株式市場にとってもゼネコン株は業績で買える貴重な投資先だ。
円高基調に転じ、輸出産業の業績に不透明感が広がるなか、ゼネコンは数少ない事業環境が見通せる業種として、市場で評価されていた。
日経平均株価が昨年末から15%下落した一方、業種別日経平均の「建設」は1%安にとどまる。
熊谷組の株価は1日、264円と前日比6%反発したが、業界が抱える火ダネは今後折に触れ、くすぶることになりそうだ。
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